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ひとり、牛めしを食しながら想う。予定調和なエモさの正体

公開日:2026.03.17 更新日:2026.03.15バンド楽器上達のコツ音楽のマナビ楽曲・アーティスト紹介

ひとり、牛めしを食しながら想う。予定調和なエモさの正体

最近、松屋(デパートではなく牛丼屋)の店内で流れている「特別じゃない特別」という曲、耳にされた方も多いのではないでしょうか。

一聴すると、あのアコースティックギターの響きや、少しハスキーで切なげな歌声……。「あれ、あいみょんさんの新曲かしら?」あるいは「今のAIって、ここまで精巧に『あいみょん風』を再現できるの?」と、少し驚いてしまったのが正直なところです。

でも、調べてみるとこれはAIではなく、心愛 -KOKONA-さんという卓越したソングライターが、松屋のために作り上げた公式ソングなのだそうです。


計算され尽くした「人間味」というトッピング

この曲がなぜAI製のように感じられてしまうのか。それは、この曲があまりにも「今の日本人が心地よいと感じる感動の正解」を、プロの技術で完璧にトレースしてしまっているからかもしれません。

誰にでも届く等身大の言葉、日常の些細な幸せを肯定するメロディ、そして計算された少しの泥臭さ。それらは、マーケティング的に「こうすれば大衆は喜ぶだろう」というデータから逆算された、効率的なフォーマットに見えてしまいます。

ここで思い出すのが、かつて日本を代表する音楽家である桑田佳祐さんが、広告代理店の主導で生まれた大ヒット曲「海の声」に対して抱いた複雑な思いです。


桑田佳祐さんが感じた「敗北」の正体

数年前、auのCMから生まれた「海の声」が社会現象になった際、桑田さんは自身のラジオ番組などでその楽曲の完成度を高く評価しつつも、ある種の敗北感を口にされていました。

それは音楽的な負けではなく、純粋な音楽シーンの枠外、つまり広告代理店が緻密な戦略に基づいて作り上げた「感動のパッケージ」が、本職のミュージシャンが魂を削って作る作品を凌駕し、時代のメインディッシュになってしまったことへの危機感だったのではないでしょうか。(裏読みすぎかもしれません。いや、勝手なこちらの解釈です。すみません。)

松屋のこの楽曲にも、同じ匂いを感じてしまうのです。本来、デザートや付け合わせであるはずの「広告的な情緒」が、いつの間にか私たちの音楽体験の主役に居座っている。この状況を、私は「心の貧困」として危惧しております。(しらんがなという批判、甘んじて受け止めております。)


無機質な聖域が汚染されるとき

私が松屋に求めていたのは、もっとドライで、殺伐とした、けれど清々しいほどの機能性でした。誰とも目を合わせず、券売機を叩き、運ばれてきた牛めしを無心で胃に収める。そこには余計な物語なんて介在しなかったはずです。

それなのに、店内に流れるこの「エモい」音楽は、私たちの孤独に勝手に土足で踏み込み、牛めしを食べる時間は特別な日常なんだよと囁きかけてきます。その、押し付けがましいウェットさに、私は少しばかりの虚しさを覚えてしまうのです。

安易な感動のトッピングを拒絶し、アツアツの牛めしのみを咀嚼する。私は今後も、私の中の小さな美学を貫いていきたいと考えています。

しかし、ここまでネガティブな記述しているのにもかかわらず、「特別じゃない特別」は聴いていて心地よい楽曲であると感じています。この矛盾した感情こそ、現代社会の歪みそのものかもしれません。


大人になってから新しい楽器に触れる貴方へ

情報の海の中で、誰かが作った「正解」ばかりを消費させられる毎日。そんな中で、自分の身体で、自分のための音を探そうとする貴方を、心から尊敬します。

大人が新しく楽器演奏を試みる時、誰かのためのエモさは必要ありません。楽器に吹き込む息や、鍵盤を叩くその指先が、たとえ最初はたどたどしくても、それは広告代理店が用意したテンプレートとは無縁の、貴方だけの純粋な表現です。

世界がどんなに安っぽい物語で溢れても、貴方が奏でるその一音だけは、誰にも汚されることのない真実です。どうか、その贅沢な孤独を、大切に育てていってくださいね。

心より、応援しております。

 

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