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グランドピアノとアップライトのタッチの違い

公開日:2025.12.22 更新日:2025.12.14クラシック楽器音楽のマナビ

グランドピアノとアップライトのタッチの違い

「家では電子ピアノで練習しているけれど、レッスンのグランドピアノだとなぜか上手く弾けない…」
「発表会で早いパッセージ(フレーズ)を弾いたとき、指がもつれて音が抜けてしまった…」

ピアノを習っている方なら、一度はこんな経験があるのではないでしょうか。
実はそれ、あなたの指のせいだけではありません。あなたが弾いている「ピアノの構造」そのものに原因がある可能性が高いのです。

ピアノには大きく分けて「グランドピアノ」と「アップライトピアノ(縦型)」があります。どちらも同じ「ピアノ」という名前ですが、蓋を開けて中身を見てみると、これらは「似て非なる別の楽器」と言いたくなるほど、全く違うメカニズムで動いています。

今回は、少しマニアックな「内部構造」の世界へご案内します。
なぜプロはアコースティックピアノにこだわるのか?「連打」や「ペダル」の仕組みを知れば、あなたのタッチへの意識が今日から劇的に変わるはずです。

 

1. 1秒間に14回!「連打」を可能にする発明『レペティション』

まず、プロが使うグランドピアノと、家庭や学校によくあるアップライトピアノの決定的な違いから見ていきましょう。それは、「鍵盤を叩いた後、次の音が出せるようになるまでの速さ」です。

重力 vs バネ

ピアノは、鍵盤を押すとハンマーが弦を叩き、戻ってくることで音が出ます。
グランドピアノは、弦が床と水平に張ってあります。そのため、ハンマーは下から上に跳ね上がり、「重力」によって自然にストンと下に戻ります。

一方、アップライトピアノは弦が縦に張ってあります。ハンマーは横から叩く動きになるため、重力で戻ることができません。そのため、「バネ(スプリング)」やテープの力を借りて、強制的に元の位置に戻す必要があります。

「重力」による自然な戻りと、「バネ」による人工的な戻り。この構造の違いが、指に伝わるタッチ感の差を生んでいます。

必殺技:ダブル・エスケープメント(二重脱進機)

ここで登場するのが、グランドピアノに搭載されている革命的な機構、通称「レペティション(ダブル・エスケープメント)」です。

簡単に言うと「鍵盤が完全に戻りきっていなくても、途中でまた次の音が出せる機能」です。
この機能のおかげで、グランドピアノは理論上、1秒間に約14回もの連打が可能です。トリル(2つの音を素早く交互に弾く)などがパラパラと鮮やかに決まるのはこのためです。

対して、この機構を持たない一般的なアップライトピアノは、鍵盤をほぼ上まで戻さないと次の音が鳴りません。連打性能は1秒間に約7回程度と言われています。

「じゃあ、アップライトピアノは劣っているの?」と思われるかもしれません。
いいえ、そうではありません。この「バネを使った独特の弾き心地」や「鍵盤をしっかり戻して弾く感覚」こそが、アップライトピアノの個性であり、ピアノ演奏の基礎を支える重要な要素なのです。

 

2. 左ペダルの意味が全く違う?「シフト」する魔法

次に、足元のペダルに注目してみましょう。
一番左にあるペダル(ソフトペダル)を踏んだ時、何が起きているかご存知ですか?

グランドピアノの場合:鍵盤ごとズレる(シフト)

グランドピアノで左ペダルを踏むと、鍵盤とハンマー全体が横にズレます(シフトします)。
叩く弦の本数が3本から2本に減ることで、音色が「こもったような、甘く幻想的な音」に変化します。これを「ウナ・コルダ」と呼びます。

アップライトの場合:近づくだけ

一方、アップライトピアノで左ペダルを踏むと、ハンマー全体が弦に「近づきます」
助走距離が短くなるので、勢いがつかずに音が小さくなる、という仕組みです。

構造は違いますが、アップライトピアノのこの機能も重要です。夜間の練習で音を抑えたい時や、繊細な音量コントロールを練習する際に、ハンマーの距離感を指先で感じるトレーニングになります。

 

3. なぜ「電子ピアノ」ではダメなのか?決定的な違い

ここまで構造の違いをお話ししましたが、グランドピアノもアップライトピアノも、共通して言えることがあります。
それは、どちらも「ハンマーが弦を叩いて音が鳴る、アコースティック楽器である」ということです。

「家では電子ピアノだから関係ない話かな…」と思った方。ここが一番重要なポイントです。

「無限の音のグラデーション」は生ピアノだけの特権

電子ピアノは、あくまで「録音された音」を再生しています。
スイッチが入れば、誰が押しても、どんな気持ちで押しても、「メーカーが用意した綺麗な音」が出ます。

しかし、本物のアコースティックピアノ(アップライト含む)は違います。
約8,000個もの部品が複雑に連携し、フェルト製のハンマーが弦を叩き、その振動が木の板(響板)を震わせ、ボディ全体が唸ります。

その日の湿度、ハンマーの硬さ、そしてあなたの指先のスピード、体重のかけ方。
これら全てが音色に反映されます。
「悲しい気持ちで弾いた音」と「怒って弾いた音」が違う。
そんな魔法のようなことが起きるのは、物理的な振動がある「生ピアノ」だからこそです。

アップライトピアノであっても、この「弦を叩く手応え」や「体に伝わる木の振動」は本物です。電子ピアノでは決して味わえない、楽器との対話がそこにはあります。

 

4. アップライトピアノで「本物のタッチ」を磨こう

グランドピアノは確かに素晴らしい楽器ですが、日本の住宅事情を考えると、ご自宅に置くのは難しいのが現実です。
だからこそ、多くのご家庭や学校で愛用されている「アップライトピアノ」の価値を見直してみませんか?

クラブナージ音楽教室では、レッスンにアップライトピアノを使用しています。

「えっ、グランドピアノじゃないの?」と思われるかもしれませんが、実はこれには大きなメリットがあります。
それは、「電子ピアノでは得られない『アコースティック楽器本来の抵抗感と響き』をしっかり学べる」ということです。

バネの力を感じる鍵盤の重み、ハンマーが弦に当たる瞬間のショック、そしてお腹に響く重低音。
これらをレッスンで体感することで、「家での電子ピアノ練習」の質も変わります。
「ここではもっと指を深く入れないと音が響かないな」「優しく触れないと音が割れちゃうな」といった想像力が養われるからです。

アップライトピアノは、グランドピアノの廉価版ではありません。
限られたスペースの中で、最大限に美しい響きを奏でるために進化してきた、立派なアコースティック楽器です。

ぜひ、クラブナージ音楽教室で、本物のピアノが持つ「生き物のような振動」を感じてみてください。
電子ピアノでは気づけなかった、新しい音の世界があなたを待っています。

 

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