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シューゲイザーとは|音楽ジャンル解説シリーズ

公開日:2025.11.06 更新日:2025.10.19バンド楽器音楽のマナビ

シューゲイザーとは|音楽ジャンル解説シリーズ

シューゲイザーという音楽ジャンルについて解説します


音楽は、非常に多くのジャンル名によって分類されます。「ロック」「ポップ」「ヒップホップ」などのジャンルは、誰もが耳にしたことがありますよね。
そんな中、少しマニアックだけれども、聴けばその世界観に一気に引き込まれる――そんなジャンルがあります。それが「シューゲイザー」(Shoegaze)です。今回は、シューゲイザーの名前の由来から歴史、サウンドの特徴、代表的な楽曲、そして関連・近接ジャンルまで、音楽に詳しくない方も“なるほど”となるように、やさしく解説します。

1.名前の由来と歴史的な歩み

まず “シューゲイザー” という名前、なんとも不思議ですよね。英語で “shoe”=靴、“gaze”=じっと見る・見つめる、つまり「靴を見つめる人」。なぜ音楽ジャンルにそんな名前が付いたのか?それは、80年代末から90年代初頭のイギリス/アイルランドのインディ・ロック・シーンで、ライブ中にギタリストがエフェクト・ペダルだらけの床をじーっと見つめていた、その姿を英国の音楽メディアが「靴を見つめて(=ペダルを操作して)ばかりだね」と揶揄したことがきっかけだといわれています。

歴史的には――

  • 1980年代後半、イギリス/アイルランドでポスト・パンク、ノイズ・ポップ、ドリーム・ポップ、ネオ・サイケデリアなどの影響を受けたバンドたちが、「音の質量(ギターの歪み・リバーブ・フィードバック)」を重視したサウンド実験をしていました。 
  • 1990年代初期、この流れがもう一段加速し、代表的なバンドたちが登場。たとえば My Bloody Valentine(MBV)が1991年アルバム『Loveless』でジャンルのひとつの頂点を迎えます。 
  • しかしながら、90年代中期以降、商業的にはブリットポップグランジなどのムーブメントに押され、シューゲイザーの最初の流行はやや陰りを見せます。 
  • それでも、2000年代以降、また2010年代・2020年代には“復興”(いわゆる “nu‑gaze”/ニュー・ゲイズ)という形で新しい世代に影響を与えるジャンルとして再注目されています。 

2.サウンドや構成の特徴

では、具体的に「これがシューゲイザー」という音の特徴を見ていきましょう。

・重層ギター&エフェクト多用
シューゲイザーの最大の特徴は、ギターの音が壁のように繰り出される点です。大量のリバーブ、ディレイ、フランジャー、フィードバック、そして歪み。ギターが「メロディを弾く」というより「雲のように漂い、包み込む」感じ。この、「たくさんエフェクターを使う」というスタイルが、足元を見て演奏する原因となり、それがシューゲイザーと呼ばれるきっかけになったのです。

・ヴォーカルは“遠く”に、または“埋もれて”いる
ギターの質量感が強いために、ヴォーカルが前に出て「どん!」と主張することは少ないです。むしろ声がエフェクトで曖昧になり、パートとして“質感”の一部になっていることが多いです。これが、「歌詞を聴き取りにくい」「声が溶け込んでいる」と言われる所以です。

・構成・リズムは静/動のコントラスト、あるいは浮遊感重視
一般的な〈ヴァース–コーラス–ヴァース〉という構成を必ずしも強く踏襲せず、どこか“流れ”や“浮遊感”を重視する曲も多いです。リズムが淡く、ギターの質感が中心、歌もメロディも霞むように存在する…という雰囲気です。

・ノイズ/フィードバックも“美しく”使う
ただの歪みではなく、フィードバック(ギターからアンプに戻る音のループ)を含んだ“ノイズ”を、あえて“うねり”として使う。これが独特の世界観を生み出しています。 

例えて言うなら、「霧の中を歩く」、あるいは「厚めの毛布に包まれて音を浴びる」といった体験。初めて聴く人は、“何を言ってるか聴き取りづらいけど、音に包まれて心地よい”という感覚を味わうかもしれません。

3.代表的な楽曲3つ

それでは、“これを聴けばシューゲイザーが分かる!”という代表曲を3つ紹介します。入門にもピッタリです。

  • Only Shallow – My Bloody Valentine
    1992年のアルバム『Loveless』冒頭を飾るこの曲は、「グライドギター」と呼ばれる技法も含め、ジャンルを象徴する1曲です。

  • Vapour Trail – Ride
    デビュー・アルバム『Nowhere』(1990)より。12弦ギターのジャングルリーなリフと浮遊するヴォーカルが特徴。「これぞシューゲイザー」という声も多いです。 

  • Alison – Slowdive
    1993年アルバム『Souvlaki』より。ふんわりとしたメロディに包まれながら、背後にはギターの波がうねる――そんなシューゲイザー・トラックです。

どれも「音を浴びる」「質感を楽しむ」体験を提供してくれます。言葉を超えた“音の景色”に浸ってみてください。

4.関連・近接ジャンル

シューゲイザーは独立したジャンルですが、その周辺や影響を与えた/受けたジャンルも多く存在します。少し整理しましょう。

  • ドリーム・ポップ(Dream Pop)
    シューゲイザーと混同されることもありますが、ドリームポップの方が「メロディ重視」「歌が前に出やすい」「ポップ感あり」の傾向。シューゲイザーはより“音の質量”を増しているという違いがあります。
  • ノイズ・ポップ/ネオ・サイケデリア
    前史として、ノイズ・ポップ(The Jesus and Mary Chain など)や70~80年代のサイケデリア的インディロックの影響が大きいです。
  • ブラックゲイズ(Blackgaze)/ニュー・ゲイズ(Nu‑gaze)
    シューゲイザーの“壁の音”とブラックメタルの“轟音・激烈さ”を融合したブラックゲイズ、また2000年代~新世代が再解釈したニュー・ゲイズも存在。
  • ポスト・ロック/アンビエント・ロック
    シューゲイザーの“質感・音の広がり・空間性”という要素は、ポスト・ロックにも通じており、境界が曖昧な点もあります。

つまり、シューゲイザーを学ぶことで、音楽の“形”だけでなく“聴くと何を感じるか”まで少し広がるわけです。「ギターとエフェクトで世界を作る」という視点が、多くの関連ジャンルに波及しています。

5.まとめ

さて、ここまで「名前の由来」「歴史」「音の特徴」「代表曲」「関連ジャンル」と、シューゲイザーのだいたいの地図を一緒に見てきました。最後に、改めてポイントを整理しておきます。

  • 名前は〈演奏中にペダルを見つめる/靴を見つめる〉というステージ姿勢から生まれた揶揄的な言葉。
  • 1980年代末~1990年代初頭、英国/アイルランドのインディ・ロック・シーンで花開き、音の“壁”と浮遊感を武器にしたジャンル。
  • 音の特徴として「大量エフェクト/ギター重層」「ヴォーカルが遠い/埋もれる」「構成より質感/流れ重視」という点があります。
  • 代表曲として「Only Shallow(MBV)」「Vapour Trail(Ride)」「Alison(Slowdive)」などを聴くことで、その空気感が体験できます。
  • そして、その影響・近接ジャンルとしてドリームポップ、ノイズポップ、ポストロック、ニューゲイズなどが存在し、現在も新しい展開を見せています。

聴き方のヒントとしては、まず静かなイヤホン/ヘッドホンで、「ギターの音が重なっているな」「声がどこか遠くにあるな」「あ、これが壁だな」と思えるポイントを探すのも面白いでしょう。ライブ映像があれば、ギタリストが本当にペダルを見つめてる(=靴を見てる)その姿も含めて注目してみてください。

「ギターをジャーン!と弾いてノリノリ!歌ガッツリ」というスタイルとは少し違う、むしろ“音に浸る”“世界に包まれる”という体験。それがシューゲイザーの醍醐味です。ぜひ少しだけ足を踏み入れて、音の霧の中を漂ってみてください。

 

 

 

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