アマ奏者がモーツァルトのクラリネット五重奏曲を演奏するためには
公開日:2025.04.05 更新日:2025.04.05音楽を始めよう♪上達のコツ音楽のマナビ
クラリネット奏者が一定数いる地域社会において、「モーツァルトのクラ五(くらご)」すなわちモーツァルトのクラリネット五重奏曲は、時に悪魔的な魅力を放つアマチュア室内楽のラスボスとして、静かにその地位を保っています。
その優雅な旋律と室内楽らしい対話構造に惹かれて「ぜひやってみたい」と手を挙げるアマチュアは後を絶ちませんが、いざ譜面を開いた瞬間に「これ、モーツァルト本気出してない?」という疑念がよぎることでしょう。
ここでは、“弾けるような気がするけど弾けない”モーツァルト五重奏を、アマチュアがいかに攻略すべきかを、戦略的かつ皮肉と敬意を込めて検証します。
目次
弾きやすい楽章は?
結論から言うと、「簡単な楽章はないが、“気を抜かずに済む楽章”はある」です。第2楽章(Larghetto)はテンポが遅く、いわゆる“歌わせる系”の楽章ですが、ここが一番難しいと感じるアマチュアも少なくありません。
逆に、第4楽章のロンド(Allegretto)は意外と“構造的には”わかりやすい。短いフレーズの繰り返しが多く、耳馴染みもある。ただし突然現れる弦楽器の16分音符やクラリネットの細かいパッセージで油断すると事故るので、“弾けそう”という錯覚が一番の敵です。
バイオリンあるある:「開放弦使える=楽、ではない」
この曲、ヴァイオリンパートを見ると「これ、開放弦でいけるじゃん!」と一瞬思います。が、実際に開放弦を使うと、音が“安っぽく”なりがち。特にモーツァルトの音楽は透明感が命なので、倍音が濁る開放弦は往々にして“敵”です。
対策としては、半ポジや1ポジの指押さえを基本にすること。面倒でもきちんと運指を計画しましょう。クラ五の優雅な響きは、地味な左手の努力と右手の丁寧なボウイングから生まれます。
弦の16分音符は「予告なく来る刺客」
クラリネットが優雅にテーマを奏でるその裏で、弦楽器パートに突然現れる16分音符の嵐。これ、事前の対策なしでは“絶対事故る”ポイントです。
移弦を含む細かいパッセージは、個人練習で徹底的にゆっくり練習をしておくこと。弓の角度とスピードコントロールの精度がものを言います。はじめのテンポが速くなくても油断できません。モーツァルトにおける“優雅さ”は緊張の連続です。
音量バランス:クラリネットは自己主張が強め
クラリネットがこの編成の中で音量的に“浮く”リスクは非常に高いです。とくにA管の響きはまろやかですが、フォルテで吹くと一気に空間を支配します。奏者がテンション上がると、五重奏が“クラリネット独奏と弦楽伴奏”になりがち。
クラリネット奏者に求められるのは、「自分が大きい」という自覚と謙虚さ」。弦楽器側も、ピアニッシモにこだわるより“響きのブレンド”を意識することが重要です。
音程合わせ:セカンドヴィオラは“職人技”が光る
弦楽四重奏の中で純正律を活用した音程合わせは重要ですが、特にこの曲では内声(とくにヴィオラ)の耳の良さが成否を分けます。
セカンドヴィオラは、クラリネットとファーストヴァイオリンの間を繋ぐ役割を担うため、モーツァルト的な音程感(=響き重視でわずかに低めを狙う)が要求されます。「耳で合わせる職人力」が問われるポジションですが、実はここ、アマチュアにとってあまり“しんどくない”。なぜなら、メロディが少ない分、役割が明確だからです。
そもそもA管クラリネット、みんな持ってるのか問題
地味に深刻な話として、この曲はA管指定です。
B♭管で演奏できなくはないですが、移調や指使いの問題があり、あまりおすすめできません。
アマチュアでA管持ってる人…意外と少ないです。オーケストラ経験があり、チャイコフスキーを真面目に吹いたことがある人なら所持率は高め。「クラ五やりたいからA管買おうかな」と悩み始めたら、あなたはもう“モーツァルト沼”の住人です。
モーツァルト=優雅、という誤解:ある教授の証言
某・東京芸大教授曰く、「モーツァルトはうるさい音楽」。
たしかに、テンションの高いレチタティーヴォ、突然の転調、弦楽器の疾走感…“優雅”というより“躁的”ともいえる瞬間が山ほどあります。
もともとモーツァルトの室内楽は、使用人(アマチュア)が食事の合間に奏でる娯楽BGMだったという説もありますが、彼が“いいかんじ”に弾かれることを想定していたとは思えません。
下手くそだとクビになった使用人がいたのか?
この辺り、文献的検証は進んでいませんが、あの譜面を見た瞬間に「この料理人、ちょっと音楽できるからって調子乗りやがって…」と殿様がキレた光景は、容易に想像できます。
まとめ:モーツアルトのクラ五は“できるアマチュア”の履歴書である
モーツァルトのクラリネット五重奏曲は、アマチュア奏者にとって「弾けると鼻が高いが、弾けないと地獄」な曲です。
しかし、地道な練習とちょっとした戦略で、“完成度が高く見えるアンサンブル”に到達することも可能。
「モツのクラ五、やったことあります」――それは、アマチュア室内楽界において、弾ける人の証。
優雅に、そして時にはうるさく。モーツァルトの罠を、どう攻略するかはあなた次第です。
