サックスで「音の終わり」まで注意深く演奏すること
公開日:2026.08.05 更新日:2026.08.01クラシック楽器上達のコツ音楽のマナビ
サックスを吹くとき、多くの人は「音の出だし(アタック)」にかなりの神経をつかいます。「音が出なかったらどうしよう」「キレイな音で入りたい」と注意を払うのに対し、「音の終わり(リリース)」になると、急に意識が抜けてしまう人が少なくありません。
しかし、プロや一流と呼ばれる演奏者の奏でる音を聞いてみてください。音が消えていく最後の1ミリまで、まるでシルクのように滑らかで、美しく空間に溶けていきます。
実は、奏者のレベルが最も顕著に表れるのは「音の出だし」ではなく「音の終わり」なのです。
では、どうすれば音の終わりを違和感なく、美しく響かせながら終わらせることができるのでしょうか?そのための技術と「体の使い方」を解説します。
目次
音の終わりでやってしまいがちな「2つの失敗」
まず、音が汚くなったり違和感が生まれたりする原因は、主に以下の2つです。
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息を急に止めてピッチ(音程)がぶら下がる
息を吐くのをやめると同時に体の緊張を解いてしまうと、最後の瞬間に息のスピードが落ち、音程がべったり下がって「ボソッ」と終わります。
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喉や舌で強引に止めて「ツッ」「ボッ」と雑音が入る
音を止めようとして喉をギュッと閉じたり、舌をリードに強い力でバンッとぶつけたりすると、打撃音のような不快なノイズが響いてしまいます。
これを防ぎ、美しいリリースを作るには「体の各部位のコントロール」が不可欠です。
音の終わりを美しく魅せる「体の使い方」4つのポイント
① お腹:腹圧は維持したまま、息のスピードだけを滑らかに減速する
音量を小さくして音を消していく(デクレッシェンド)とき、お腹の張り(腹圧)まで緩めてはいけません。
お腹の支えを緩めると息の圧力が負け、音程が下がります。お腹(インナーマッスル)でしっかりと支えをキープした状態で、息を吐く量とスピードだけを「車のブレーキを優しく踏むように」スーッとゼロに近づけていきます。
② 喉:最後まで「開いたまま」を保ち、空間に溶かす
音を止めるときに喉(声門)を閉じてはいけません。喉を閉じると音響空間が狭まり、音が「ブツッ」と途切れます。
イメージとしては、音が消えた後も喉はあくびをした時のように開いたままにしておくこと。サックス本体から出た音が部屋の壁に反射して残響(リバーブ)となり、その響きの中に自分の息を溶かし込んでいく感覚です。
③ アゴ・アンブシュア:噛み込まず、緩めず「固定」する
音が消えかかる瞬間、音がかすれそうになって焦り、無意識に下顎でリードを強く噛み込んでしまう人がいます。これをやると音程が高くなり、キンキンした嫌な終わり方になります(逆に緩めすぎるとピッチが下がる)。
音の終わりまで、口元(アンブシュア)の形とアゴの位置は「1ミリも動かさない」のが鉄則です。
④ 舌:音を意図的に切るなら「フェルトを置く」ように優しく
息のフェードアウトではなく、曲のテンポに合わせてピタッと音を止めたい場合は「ソフトタンギング・リリース」を使います。
舌をリードにぶつけるのではなく、震えているリードの表面に、柔らかいフェルトをそっと乗せて振動を止めるイメージで、舌先を優しくタッチさせます。
また、美しいリリースを身につけるための「日常練習法」
体の使い方がわかったら、次のトレーニングを日々のウォームアップに取り入れてみてください。
???? 「無(Niente)から無(Niente)へ」ロングトーン
メトロノームをテンポ60にセットします。
息だけで静かに発音し、徐々に大きく(p → f)します(4拍)。
そこから、音が完全に聞こえなくなる極限(f → ppp → 無音)まで、腹圧を維持したまま8拍かけて消していきます。
音が消えたあとも2拍ほど、フォームと喉の開きをそのままキープします。
音線が途切れず、最後まで音程が保たれたまま「いつの間にか消えていた」という状態を作れれば合格です。
結び:音の終わりは「次の音への架け橋」
音の終わり(リリース)に気を配れるようになると、単音の美しさだけでなく、フレーズ全体の繋がりや「音楽の余韻」が劇的に変化します。
演奏において「無音(静寂)」も立派な音楽の一部です。
「音を出すこと」と同じくらい「音をどう収めるか」に情熱を注ぐ。それこそが、聴く人の心を揺さぶるプロフェッショナルの演奏への第一歩なのです。
この記事の監修者
国公立大学の音楽学部で作曲を学ぶ。


