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なぜギターのピックアップは斜めについている?ストラト・テレキャス・ムスタングを比べてみた

公開日:2026.08.03 更新日:2026.07.26バンド楽器音楽のマナビ

なぜギターのピックアップは斜めについている?ストラト・テレキャス・ムスタングを比べてみた

楽器屋さんにズラリと並んだエレキギターを眺めていると、ふと不思議に思うことがありませんか?

エレキギターの弦の振動を拾って電気信号に変えるマイク、つまり「ピックアップ」のことです。通常、6本の弦が張ってあるのだから、すべての弦の音を均等に拾うために、弦に対して「垂直(横向きに真っ直ぐ)」に配置するのが一番自然な気がしますよね。レスポールなどのハムバッカー搭載ギターを見ると、確かに真っ直ぐに取り付けられています。

ところが、フェンダー社のストラトキャスターなどをよく見てみると、一番お尻側(ブリッジ側)にあるピックアップが、あからさまに「斜め」に傾いて取り付けられています。これは、単にデザインとしてカッコいいから斜めにしているのでしょうか? それとも、音を良くするための隠された秘密があるのでしょうか。

今回は、この「ピックアップの角度」という少しマニアックで面白いテーマに焦点を当ててみたいと思います。斜めになっていることで音にどんな魔法がかかっているのか、ストラトキャスター、テレキャスター、そしてムスタングといった名器たちを比較しながら、その設計の面白さをひも解いていきましょう。

ピックアップは「弦のどこを拾うか」で音が劇的に変わる

なぜわざわざ斜めにするのか。その理由を知るためには、まず「弦の振動の仕組み」について少しだけ理解しておく必要があります。

ギターの弦をポーンと弾いた時のことを想像してみてください。弦の真ん中あたり(ネック寄り)は、ブランコのようにブォンブォンと大きく、ゆったりと揺れますよね。この大きく揺れる部分の音をマイクで拾うと、「太くて、丸みのある、温かい音」になります。

一方で、弦の根元であるブリッジ(金具)のすぐ近くはどうでしょうか。ここは弦が金具でガッチリと固定されているため、大きく揺れることができず、細かく鋭く振動しています。この部分の音をマイクで拾うと、「硬くて、鋭くて、ジャキッとしたアタック感の強い音」になります。

つまり、同じピックアップを使っていたとしても、「ネック寄りに置くか、ブリッジ寄りに置くか」だけで、出てくる音のキャラクターは全く別物になってしまうのです。これを踏まえた上で、ピックアップを「斜め」にすると何が起きるのかを考えてみましょう。

ストラトのブリッジピックアップは、なぜ斜めなのか?

エレキギターの王様とも言えるストラトキャスター。このギターのブリッジピックアップ(一番後ろのマイク)を見ると、高音弦側(細い弦)がよりブリッジの金具に近く、低音弦側(太い弦)が少しだけネック寄りになるように傾いています。

この絶妙な角度によって、6本の弦に対して以下のような効果が生まれます。

・高音弦(1〜3弦):よりブリッジ寄りで音を拾う
細い弦の音をさらに根元で拾うことで、「ジャキッ!」とした鋭さや、耳に突き刺さるようなエッジの効いたアタック感が強調されます。ギターソロでチョーキングをした時に、音が埋もれずに前へ飛び出してくるのはこのおかげです。

・低音弦(4〜6弦):少しネック寄りで音を拾う
もし低音弦もブリッジのギリギリで拾ってしまうと、音がカリカリに細くなりすぎて、コードを弾いた時の迫力が無くなってしまいます。そこで、低音弦側を少しだけネック側(大きく揺れる方)へ逃がすことで、低音の「太さ」や「重さ」をしっかり確保しているのです。

つまり、ストラトキャスターの斜めピックアップは、「高音はより鋭く、でも低音は細くなりすぎないように」という、1つのマイクで異なるキャラクターを両立させるための非常に合理的なアイディアだったというわけです。

テレキャスターはもっと大胆に斜め!理由は同じ?

さて、ストラトよりもさらに歴史が古い「テレキャスター」を見てみましょう。テレキャスターのブリッジピックアップも、ストラトと同じように斜めに取り付けられています。しかも、ストラトよりもかなり強烈な角度で傾いています。

では、テレキャスターの音もストラトと同じような理由で斜めになっているのでしょうか? もちろん「高音を鋭く、低音を太く」という狙いは共通しています。しかし、テレキャスターの場合は、ただピックアップが斜めになっているからあの音が出ている、というほど単純な話ではありません。

テレキャスターのブリッジピックアップは、巨大な金属の板(ブリッジプレート)に直接ぶら下がるように取り付けられています。さらに、ピックアップの裏側には銅やスチールの金属プレートが貼られており、これが磁界を変化させています。

これらの「金属パーツの塊」と「強烈な斜めの角度」が複雑に絡み合うことで、あのテレキャスター特有の「トゥワンギー(Twangy)」と呼ばれる、バネが弾けるような鋭い高音と、ゴリッとした無骨な低音が生まれているのです。同じ「斜め」でも、ギター全体の設計思想が違うと、ここまで全く違う音になるのがエレキギターの面白いところですね。

ムスタングのシングルコイルも斜め。その意図は?

ストラトやテレキャスとは少し毛色の違う「ムスタング」というギターも、ピックアップが斜めに取り付けられています。しかも、フロント(前)とリア(後ろ)の両方が、そろって斜めになっているという、とてもユニークなルックスです。

ムスタングの場合も、弦を拾う位置を前後にずらすことで音の帯域をコントロールしようという狙いはあると言われています。しかし、ムスタングの最も大きな特徴は、ギターの首(ネック)が短い「ショートスケール」で作られていることです。

弦の長さが短いということは、それだけ弦の張力(テンション)が弱く、振動の仕方もストラトなどとは根本的に異なります。そのため、「斜めになっているからストラトと同じような効果が出る」とは一概には言えません。短い弦特有のポコポコとした可愛らしい音と、斜めに配置されたピックアップの位相(音の波)が独特の混ざり方をすることで、ムスタングにしか出せないオルタナティブで暴れ馬のようなサウンドが生み出されているのです。

リバーススラントの魔法(逆向きに斜めにしたら?)

「じゃあ、この斜めの角度をあえて逆向きにしたらどうなるの?」と考える方もいるでしょう。
つまり、低音弦側をブリッジのギリギリに寄せて、高音弦側をネック寄りにするセッティングです。これをやると、理屈の上では「低音はよりタイトで硬く引き締まり、高音は耳障りな痛さが消えて太く丸くなる」ことになります。
実はこれ、伝説のギタリストであるジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)が、右利き用のストラトキャスターをひっくり返して左利き用として使ったことで、偶然にもこの「リバーススラント」状態になっていました。彼のあの独特の太い高音と、濁らないタイトな低音のリフは、この逆向きのピックアップが生み出した奇跡の産物でもあったのです。

「斜め=音が良くなる」わけではない。すべては全体のバランス

ここまで読んでいただくと、「ピックアップは斜めの方が色々な音域が拾えて優れているんだな!」と思ってしまうかもしれません。しかし、音楽の世界に絶対の正解はありません。

レスポールのようにピックアップを真っ直ぐに配置し、6本の弦のバランスを均一に揃えることで生まれる「壁のような分厚いサウンド」を愛するギタリストも星の数ほどいます。

実際のギターの音というのは、ピックアップの角度だけで決まるものではありません。マイクの中に入っている磁石の種類、巻かれている銅線の数、ボディやネックに使われている木材の材質、ブリッジの構造、そしてアンプのセッティングなど、何十種類もの要素が複雑に混ざり合って、最終的な「あの音」が作られています。

「ストラトがストラトらしい音がするのは、ピックアップが斜めだから」と単純化するのではなく、「斜めにするというアイディアも、あの素晴らしい楽器を作り上げた天才たちの設計思想の1ピースなんだな」と捉えるのが正しいかもしれません。今度楽器屋さんに行ったり、好きなバンドのライブ映像を見る時は、ぜひギタリストの手元にある「ピックアップの角度」にも注目してみてください。ギターの見方が少し変わって、もっともっと面白くなるはずですよ。

楽器の構造を知れば、ギターはもっと上手くなる!プロに教わってみませんか?

「自分のギターのピックアップの特性がよく分からない」「ネットで機材の知識を読んだけれど、実際に自分の出している音が正しいのか客観的に見てほしい」

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この記事の監修者

橘 レイジ 音楽ライター/クリエイティブディレクター

幼少期のピアノ経験に加え、ギター、ベース、ドラムなどバンド楽器全般の演奏やDTM作編曲を網羅。大学卒業後は音楽関連企業での企画・音源制作・エンジニアリング実務を経て、現在は広告制作のディレクターとして活動中。演奏・制作・演出の3つの現場経験に基づき、音楽の魅力を専門的かつ論理的に解説する。

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