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新品なのにボロボロな「レリックギター」のロマンを徹底解説

公開日:2026.05.05 更新日:2026.04.29バンド楽器音楽のマナビ

新品なのにボロボロな「レリックギター」のロマンを徹底解説

楽器屋さんに足を運んで、壁にズラリと並んだ色鮮やかなエレキギターを眺めていると、たまに不思議な光景に出くわすことがあります。

ピカピカの真新しいギターたちの中に混じって、なぜか1本だけ「何十年も弾き倒されたのかな?」と思うほど、塗装が剥がれ、木肌がむき出しになり、金属パーツもサビだらけのボロボロのギターが飾られているのです。

しかも、その値札を見てさらに驚愕します。なんと、隣に並んでいる傷ひとつないピカピカの新品よりも、その「ボロボロのギター」の方が何十万円も高い値段で売られているのです。
音楽にあまり詳しくない方がこれを見たら、「不良品をお店に置き忘れてるんじゃないの?」とツッコミを入れたくなっても不思議ではありません。

しかし、実はこれ、中古品や不良品では決してありません。職人の手によって緻密な計算のもとに作られた、れっきとした「新品」なのです。
今回は、ギターの世界特有のちょっと変わった文化、「レリック(エイジド)加工」と呼ばれるギターの魅力と、ギタリストたちがなぜそんなに高いお金を払ってまで「傷だらけのギター」を求めるのか、そのマニアックな心理を徹底的に解説していきます。

レリック(エイジド)加工のギターとは?

レリック加工、あるいはエイジド加工とは、工場で完成したばかりの真っ新な新品のエレキギターに対して、熟練の職人が手作業でわざと傷をつけたり、塗装を剥がしたりして、「何十年もの間、過酷なステージで弾き込まれてきたヴィンテージギターのような風格」を人工的に再現する技術のことです。

補足解説

一番イメージしやすい身近な例は、ファッションにおける「ダメージジーンズ」です。
新品のデニムにわざと色落ち加工を施したり、カッターで破れ目を入れたりして、長年穿き込んだような味わいやこなれ感を演出しますよね。レリックギターは、まさにあのダメージ加工のエレキギター版だと言えます。

【主な加工の内容】

  • ボディの塗装を意図的に剥がし、下地の木材を露出させる
  • 「ウェザーチェック」と呼ばれる、経年劣化による塗装の細かなひび割れを刃物や温度変化で再現する
  • ネジやブリッジといった金属パーツを特殊な薬品でサビさせる、あるいかくすませる
  • 真っ白なプラスチックのパーツを、タバコのヤニや紫外線で長年焼けたような黄色に変色させる

これらは適当に傷をつけているわけではありません。「ギタリストが長年弾き続けると、腕が当たるこの部分の塗装が剥がれるはずだ」「ベルトのバックルが当たる裏側にはこういう傷がつくはずだ」という、膨大なヴィンテージギターのデータに基づき、極めて芸術的でリアルな経年劣化が施されているのです。

なぜわざわざ傷をつける?レリックギターが高額な理由と魅力

ではなぜ、ピカピカの新品ではなく、あえて傷だらけに加工されたギターを求める人が後を絶たないのでしょうか。
そしてなぜ、傷がついているのに通常のモデルよりも値段が高くなってしまうのでしょうか。

補足解説

レリックギターが高額になる理由はシンプルで、「通常のピカピカのギターを完成させた後、さらにそこから膨大な手間と時間(職人の手作業)をかけてダメージ加工を施すから」です。
それでもなおギタリストが買い求めるのには、大きく分けて3つの強烈な魅力(理由)が存在します。

魅力(メリット) 詳細な理由とギタリストの心理
① 圧倒的なヴィンテージのオーラ 本物の1960年代のヴィンテージギターを買おうとすると、数百万円〜数千万円という家が買えるほどの値段になります。レリック加工なら、「伝説のロックスターが持っていたような歴史の重みを感じるルックス」を、現実的な価格で手に入れることができるという強烈なロマンがあります。
② 木材の「鳴り」が良くなる(という説) エレキギターはボディの木材が振動することで豊かな音を生み出します。レリック加工で分厚い塗装をあえて剥がしたり、薄くしたりすることで、木材が本来持っている振動を妨げなくなり、新品なのにまるで何十年も弾き込まれたような「枯れた(乾いた)良い音」が出やすくなると言われています。
③ 弾きやすさと「最初の傷」への安心感 ピカピカの新品ギターを買うと、少しでも壁にぶつけて傷がついただけで何日も落ち込んでしまいます。しかし、最初からボロボロのレリックギターなら、ちょっとくらいぶつけても「味が出た」と笑って済ませられます。また、ネック(握る部分)の裏側の塗装が剥がされているため、汗をかいても手が滑りやすく、非常に弾きやすいという実用的なメリットもあります。

つまりレリックギターは、見た目がカッコいいというファッション的な要素だけでなく、「音の良さ」と「プレイヤーの心理的・物理的な弾きやすさ」という、非常に理にかなった実用性も兼ね備えているからこそ、プロアマ問わず愛されているのです。

ダメージの深さで選ぶ!レリック加工の種類

一口に「レリックギター」と言っても、すべてのギターが原型を留めないほどボロボロにされているわけではありません。
購入するプレイヤーの好みに合わせて、「どれくらい使い込まれた感を出すか」というダメージのレベルを選ぶことができるのも、この文化の奥深いところです。

補足解説

メーカーによって呼び方は多少異なりますが、代表的なエイジド加工のレベルを3段階に分けてご紹介します。

加工レベル 特徴・シチュエーション設定
クローゼット・クラシック
(ライト・エイジド)
「長年、家のクローゼットの奥に大切にしまわれていたギター」という設定。塗装の剥がれなどの目立つ傷はほとんどなく、金属パーツが少し曇っていたり、塗装に細かなひび割れが入っている程度の、非常に上品な経年劣化です。
ジャーニーマン・レリック
(ミディアム・エイジド)
「前の持ち主が週末のライブなどで適度に弾き込んでいたギター」という設定。弾き傷や打痕(ぶつけた跡)、腕が当たる部分のちょっとした塗装剥がれなどがあり、最も自然でリアルな「使われてきた感」を楽しめる一番人気のレベルです。
ヘヴィ・レリック 「プロのミュージシャンが、何十年もの間、毎日のように過酷なワールドツアーで弾き倒してきたギター」という設定。ボディの塗装の半分以上が剥がれ落ち、木肌が黒ずむほどむき出しになった、凄まじい迫力とオーラを放つ加工です。

まとめ|傷の一つ一つが「自分だけの物語」になる

いかがでしたでしょうか。新品のギターにわざわざ高いお金を払って傷をつけてもらうという、詳しく知らない人から見れば狂気とも思える「レリックギター」の世界。

しかし、ダメージジーンズを穿いて出かける日に少しだけ気分が高揚するように、歴史の重みを感じさせるボロボロのギターを肩から下げてアンプのスイッチを入れた瞬間、プレイヤーは誰もが「伝説のロックバンドの一員」になったような無敵の気持ちを味わうことができます。

効率や新しさが求められる現代だからこそ、時間を経たもの(のように見えるもの)に宿る不完全な美しさに惹かれる。レリックギターは、そんな大人の心の余裕とロマンを強烈に刺激してくれる、最高に贅沢な楽器なのです。

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